工事・現場の特徴
PCaPC工法で柱の少ない大スパンを実現
まず、今回の工事に当たり大規模病院としての機能上、地震時の揺れを低減できる免震構造が採用されました。加えて1床室あたりの面積の規定をクリアして4床室を配置する必要があること、そして手術室や診察室など多様な用途の施設が必要になるため、効率の良い空間利用が求められました。そこで柱が少ない大スパンの建物であることが必須条件になりました。
「発注者が大スパンを希望される場合、一般的に鉄骨造が採用されるパターンが多くなりますが、鉄骨造は施工時の騒音が大きい上、建物としての揺れがRC造より大きいため、免震構造との相性が良いPCaPC工法が採用されました。工事場所は3面が歩道を含めた道路に面していますが、近隣はマンションが多い上、残りの一面は既存病院と近接する狭隘な現場です。そのようなロケーションを考慮し、施工時の騒音が少なく、12m×9mグリッドという大スパンが実現できるPCaPC工法が最適であると判断しました」と同工法が採用された背景を説明するのは、これまで国際医療福祉大学高邦会グループの工事を複数担当してきた実績から事業主の信頼も厚い上田哲生統括所長です。上田統括所長は今回の建替工事は同工法の優れた点をアピールする絶好の機会だと捉えています。
「これまでPCaPC工法を使ったキャンパス内にある病院や建物などを手掛けてきましたが、大都市の中心部で建設するのは当社としては初めてです。同工法は優れた工法ですが一般的に広く知られていません。そこで多くの方が足を運びやすい好条件の立地を活かして見学会の開催にも力を注ぎ、多くの方に興味を持っていただけるよう動画やパンフレットを制作してアピールしました。そんな活動が功を奏して設計事務所や大手ゼネコンなど延べ550人の見学者が訪れました」と現場見学会について話すのは黒田孝之所長です。
このように内外から注目を集めた本工事ですが、現場が市街地の狭小地にあり、隣接する道路も交通量が多いためクローラーではなくタワークレーンを採用しています。当社の建築現場では初めてとなる約600tmの大型タワークレーンを設置して、緻密な資材の搬入管理を行いながら工事を進めています。

浅層改良工法を用いた地盤改良で
工期短縮とコスト削減を図る
まず、本工事の特徴の1つが免震装置の設置です。装置を設置するため地下に6.0m掘り、そこに切梁を配置して山留を支えた上で、機械を掘削した地面まで降して浅層改良工法を用いた地盤改良を行いました。設計段階では一般的な工法である柱状改良を予定していましたが、工期短縮、コスト削減などのメリットがある浅層改良工法に変更しました。
「6mの深さがあれば2段切梁に計画しがちですが、それだと工期やコストも倍以上かかりますので、古澤技師長に相談し1段で支えられるような高さに切梁を配置できるように工夫し、土砂崩れや地滑り防止を図りました。加えて切梁が浅層改良を行う重機に当たらない位置へ架けなければならないため、緻密な計画を立てて実行しました」。(上田統括所長)
その後、2.3mの厚みがある床版の基礎工事を行った上で免震装置の設置を行い、躯体工事へと進みました。躯体工事では標準を17日サイクルで計画。この計画を検討したのが鈴木英俊さんです。
「全部で16案ほど考えて、その中から17日で収まるサイクルを採用しました。基本的に工事は足場、柱、梁、PCケーブル挿入、ケーブル緊張、鉄骨、床版、配筋、止め枠工事、電気配線工事、コンクリート打設といった流れになります。これらの工種を1フロア全体で施工すると工事面積が広くなり17日以内に収まらないため、1フロアを2工区に分けて1工種の期間を短くして、それぞれの工区で交互に施工を進めて時間短縮を図るようにしました」。
そしてこの17日サイクルの計画に沿って施工したのが片山真人さんです。
「プレキャストのPCケーブルの緊張回数を、通常は2回のところ工期短縮のために1回に変更するなど、17日サイクルで収まるようにしました」と創意工夫をしながら施工することで、滞りなく躯体工事が進みました。




PC班の緻密な連携プレーで
効率的に工事を進める
地上12階、工事床面積は2万3,600㎡もあるため、PCa部材の使用数も膨大です。このPC工事を担当したのが3人のPC班です。まず、工場との窓口としてPCa部材の発注から搬入管理を行っているのが菅原匡宏副所長です。
「使用するPCa部材数が多いため、久留米工場をはじめ3工場に発注しています。3工場から指定日時にPCa部材が搬入できるようにこまめに連絡を取りながら調整をしています。また、現場は隣接する既存病院に通院する患者さんも頻繁に通るので、第三者災害防止の徹底も行っています」。
搬入されたPCa部材はタワークレーンによって所定のフロアに吊り上げられますが、ここで工事の指揮をしているのが押方友野さんです。
「柱や梁の架設からPC鋼材の緊張などを担当しています。17日サイクルを守れるように細心の注意を払いながら工事に当たっています。特に、梁の緊張により柱間が縮むので、予め縮む寸法を予測して柱を建てることに配慮しています」。
また、入社5年目の山口拓也さんもPC班の一人です。「入社以来ずっとPC建築の現場に従事してきましたが、元請で担当するのは初めてなので、元請としての責任を感じながら仕事に臨んでいます。また、今回の現場ではプレキャスト部材の架設、PC鋼材の緊張やグラウト充填の管理だけでなく、FR板を支持するための支保工の検討なども行っています」。
このように品質の高い施工を実践するPC班メンバー。その話しぶりからも仕事への高い意気込みが感じられます。


ベテラン職員の支援を受けながら
若手職員が活躍する現場
本工事には若い職員も多く働いていて、入社4年目の宇佐見趣さんもその一人です。新入社員の時に配属され計画段階から携わっています。
「上田統括所長は計画段階から、工事の段取りなどを手書きの絵や図で描いて分かりやすく伝えてくれ、それを3DCADに起こす仕事を担当していました。大学時代に3DCADを扱っていて、その時の経験が役立ちました。また、3Dに起こす際も分かりやすさ見やすさを追求し、大事なポイントは詳細に描くなど自分なりに工夫をすることで、作業や工法などを覚えることにも役立ちました」。
そんな経験をしてきた宇佐見さんは、現在はこれまでに身につけてきたスキルを活かしながら後輩社員を指導する役割を担っています。
「着任時は分からないことばかりでしたが、宇佐見さんをはじめ先輩方のアドバイスを元にPC工事をはじめ工事全体の知識を少しずつ増やしています。一昨年の新入社員研修後の7月に初配属になり、現場の資材整理からスタートし、協力会社への指示出しを任されるようになり、生コンクリート打設を担当させていただいています。時々、現場の外から次第に高くなる上屋の姿を見上げては『ここまでできたんだ』という実感を抱いています」と語るのは入社3年目の山下優大さんです。
山下さんと同じように新入社員研修後に初めての現場として配属されたのが入社2年目の小池優澄さんです。
「昨年の7月に着任し、最初に任されたのがコンクリート打設でした。今はRC棟という別棟の鉄筋コンクリート型枠を任されています。少しずつですが任されることが多くなっていることに責任と喜びを感じながら仕事に臨んでいます」。
こうした若手社員の良き相談役として働いているのが、15年前に退職し嘱託として復帰したベテランの河口敬助さんです。「主に施工図の作成を手伝ったり、若い職員が作成したものをチェックしています。また、若い人には自分の経験を踏まえてアドバイスをしています」。このようにベテラン職員のサポートを受けながら若い職員は成長を遂げています。
また、建築の専門知識を持ちながらも建設現場は初めての職員もいます。入社3年目の緒方則香さんは、前職は大手メーカーの建築部門に在籍し、自社工場の建設などをゼネコンへ発注する立場で働いていました。
「旅行で知った鹿児島の甑大橋の美しさに感動して施工会社を調べたら当社だったので、自分もつくる側として働きたいと思い入社しました。元々、プレキャストに対する知識はあったのですが、実際に働き始めると場所打ちと比べて現場がきれいですし、短期間で工事が進む点や安定した品質を再認識しています。 ただ日々、膨大な調整をしている現場の大変さも感じながら一つずつ学んでいます」。
このように現場での経験は浅いものの、それぞれの職員が持ち場の業務に打ち込んでおり、お互いが協力しながら工事を進めている様子が伝わってきました。
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