工事・現場の特徴
工事車両を配置し構造物補修工を実施
工事は吊り足場の設置からスタートしました。しかし、橋梁の下には川が流れる狭隘な地形で、クレーンを設置できる場所はなく、唯一、工事現場に隣接する道路から資材の搬入を行うしかない状況でした。そこで、道路脇の斜面に足場構台を設置し、そこを起点に資材を搬入する方法を採用。完成した足場を順次延長しながら、段階的に施工環境を整えていきました。一度に大量の資材は運べないため、足場の組立には時間を要し、すべての足場が完成するまでに1年以上を要しました。
足場が完成した橋梁から順次調査工に着手し、その工事計画および工程管理を担ったのが、服部所長を補佐する管理技術者の新井智道さん(1995年入社)です。
「メインとなる工事は、構造物補修工とPCグラウト充填調査・再注入工です。まずは現状把握のため、調査工から着手しました。具体的には、構造物補修工に先立つ事前調査を行い、コンクリートの浮きや剥離などの劣化状況を目視や打音により把握しています。その調査結果を踏まえて中日本高速道路㈱と施工箇所や施工方法について意見交換を行い、工事計画を作成しました。また、補修工事の難しい点として、予期せぬ事象が生じやすいことが挙げられます。補修箇所の状態によっては、予定を変更して工事を行うなど、臨機応変に対応することを心がけました。」
補修箇所の決定後、周囲を遮水シートなどで養生し、交通規制を行った本線上の規制車線内に給水車や高圧洗浄器を搭載した車両、強力吸引車などを配置します。これらの構造物補修工を担当したのが、國友勇武さん(1996年入社)です。
「橋梁の補修工事はもちろん、上部工も初めての経験であったため、技術的には知識ゼロの状態からのスタートでした。ウォータージェット工は超高圧の水で剥離コンクリートなどを取り除くため、水の飛散やコンクリート片による事故に細心の注意を払いながら施工を進めました。コンクリート除去後は、鉄筋に防錆処理を施した後、プライマー塗布やモルタル吹き付け、モルタル仕上げを行っています。これまで大きなトラブルもなく計画通りに進んでおり、今後も品質管理と安全確保に配慮しながら工事に臨んでいきたいです。」




リパッシブ工法を採用した
PCグラウト再注入工
断面修復工が終了した箇所から、続いてPCグラウト再注入に移行します。この工事では、PCグラウトが未充填の箇所に再注入することで、PC鋼材の腐食進行を抑制できる当社独自技術であるリパッシブ工法を採用しています。リパッシブ工法は、シース内に注入した亜硝酸リチウム水溶液に含まれる亜硝酸イオンが、グラウト注入の前段階で、腐食した鋼材の錆層に浸透して鋼材表面を再不動態化させるものです。さらに、グラウトの注入によってPC鋼材の腐食進行を抑制し、既設PC橋の長寿命化が可能となります。
事前にPC鋼材探査を行い、グラウトを再注入する箇所を特定します。調査には、広帯域超音波法や衝撃弾性波法を用いて、シース内にグラウトが充填されているかどうかを調査します。さらに、外からの調査工では判明しない箇所については、小径の孔をあけて内部を調査する削孔調査を実施し、グラウトの注入箇所を決定していきます。
若手職員ながら、調査工からグラウト再注入工の施工管理を任されているのが、井上雄介さん(2023年入社)です。
「補修工事の難しい点として、施工の予測が難しいことが挙げられます。特にPCグラウト再注入工は、事前に通気確認などを行い、シース内に隙間があることを確認しますが、内部にゴミなどが溜まっていると十分なグラウトを充填できなくなります。その場合は、別の場所に再注入孔を設け、グラウトを注入することによって充填性を高める必要があります。リパッシブ工法は十分な事例が蓄積されているものの、本橋ではシース内の状況把握が難しいことに加え、本工法を空隙率の小さなPC鋼棒に適用した現場はまだ少なく、その意味でも本現場はリパッシブ工法の先駆的な取り組みとなるので、多くの知見やノウハウを蓄積し、社内への情報共有につなげていきたいと考えています。」
同様に、井上さんを補佐しながらグラウト再注入工の施工管理を担っているのが、釣部雄太郎さん(2026年入社)です。釣部さんは舗装道路会社での施工経験がありますが、補修工事はもちろん橋梁工事も初めての経験だといいます。
「道路舗装と橋梁工事は大きく異なるため、ゼロから専門知識を身につけながら業務に取り組んでいます。一通りグラウト再注入工の流れは把握できましたが、最も難しいのは予期せぬ事象が起った際の判断です。例えば、グラウトを再注入する途中で止まった場合、すぐに違う位置に孔を空けるべきか、あるいは再調査を行ったうえで後日対応するのが適切かといった判断が求められます。自身で判断できるものはその場で対応し、判断が難しい場合は井上さんと相談しながら、安全第一を心がけて施工に取り組んでいます。」
現在、上り線のPCグラウト再注入工が始まったばかりですが、同工事が終了すると外ケーブル補強工などが実施される予定です。この外ケーブル補強工を担当するのが、丹治宣晃さん(2010年入社)です。
「既設橋梁には外ケーブルが設置されていないため、橋梁の強度向上として新たに外ケーブルを設置します。具体的な施工計画については、これから服部所長と相談しながら決定していきますが、外ケーブル自体がかなりの長さと重量になりますので、安全に搬入できる方法を検討し、スムーズな施工につなげたいと考えています。」
2022年10月に工事がスタートし、約3年半が経過しました。制約の多い厳しい環境下での施工に加え、施工例の少ないリパッシブ工法の導入という課題もあるなか、工事は順調に進んでいます。その背景には、職員一人ひとりが自らの役割を果たしながら連携して難題を乗り越えていく、現場のチームワークが光っています。


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