PCグラウト充てん不足部補修(リパッシブ工法)

リパッシブ工法

概要

近年、既設ポストテンション方式PC橋のグラウト充てん不足部に、凍結防止材に起因する塩化物イオンが侵入し、構造安全性を確保する上で非常に重要なPC鋼材の著しい腐食や最悪の場合には破断が報告されています。リパッシブ工法は、従来のグラウト再注入工法では、十分な補修効果を得ることができないこれらの腐食したPC鋼材に対して、亜硝酸リチウム水溶液注入と亜硝酸リチウム添加補修材充てんを行う新工法です。確実な不動態化と腐食抑制により、構造安全性の低下を防止し、既設PC橋の長寿命化を実現します。

本工法の適用が望ましい既設ポストテンション方式PC橋における変状例

主ケーブルに沿ったひび割れ、エフロレッセンス(左:主桁ウェブ 右:主桁下フランジ)
ポストテンションPCT桁橋の主ケーブルで確認された著しい鋼材腐食

特長

確かな腐食抑制
亜硝酸リチウム水溶液が、腐食したPC鋼材のCl-を含む錆層に早期に浸透し再不動態化させることで、高い腐食抑制効果が得られます。
モニタリング可能
シース内にモニタリングセンサを設置することにより、施工時および施工後の腐食抑制効果を、電気化学的にモニタリングできます。
優れた耐久性
亜硝酸リチウム添加補修材が、錆層内に浸透した亜硝酸リチウムの外部への拡散を抑制し、長期的な腐食抑制効果を発揮します。
維持管理費用の縮減
PC構造物の安全性低下を防止することで、従来の対策では必要とされた補強を行う必要がなく、維持管理費用が縮減されます。
広汎な適用性
主ケーブル、せん断鋼棒、横締めケーブル・鋼棒など、あらゆるポストテンション方式のPC鋼材に対して適用可能です。
  • リパッシブ工法は、NETIS登録技術(登録No. KT-120108-VR)です。
  • 神戸大学森川英典教授研究室との共同開発工法で、特許第5312526号です。

施工手順

施工手順概要図

40%亜硝酸リチウム水溶液(パッシブガードLN)

パッシブガードLNは、濃度40%の亜硝酸リチウム(LiNO2)水溶液です。中性化や塩害により腐食した鋼材に対して直接塗布または浸せきさせることにより、効果的に腐食抑制ができます。PCグラウト充てん不足部補修「リパッシブ工法」(NETIS登録No.KT-120108-VR 特許第5312526号)に適用でき、水溶液注入工においては注入用水溶液として、補修材充てん工においてはセメント系小間隙充てん用補修材「ギャップガードPC」への添加用としてご使用いただけます。

特長

確実な腐食抑制効果
亜硝酸イオン(NO2-)が腐食した鋼材の錆層に浸透し、鋼材表面を再不動態化させます。
確実な腐食抑制効果概要図
ギャップガードPCへの添加が可能
PCグラウト充てん不足部補修工法「リパッシブ工法」に使用するセメント系小間隙充てん用補修材「ギャップガードPC」に添加できます。
ASRが生じた構造物への適用が可能
ASR(アルカリシリカ反応)抑制効果のあるリチウムイオン(Li+)を含んでいるため、ASRを生じたコンクリート構造物にも適用できます。

外観・物性

外観 青色透明液体
pH 8~10
密度 1.20~1.30

荷姿

Lタイプ(NET20kg)
Sタイプ(NET1.9kg)
SタイプはギャップガードPC1缶(20kg)添加分計量品です。

留意事項

取り扱い上の注意事項
  • 他の混和剤や化学物質(特に酸性物質)との混合は、絶対にしないで下さい。有毒ガスを発生するおそれがあります。
  • 保護メガネ、保護手袋(軍手は不可)などの保護具を着用の上、お取り扱いください。
  • スプレー塗布による当該材料の施工はおやめください。
  • 当該材料は草木にかかると枯れる場合がありますので、使用時には十分な養生を行ってください。
  • 内容物、容器を廃棄する際には、必ず都道府県知事の許可を受けた専門の廃棄物処理業者に業務委託してください。
  • 河川等への廃棄は絶対にしないでください。
  • 本材料が入っている容器は、破損させないよう注意してください。
  • 保管は、容器を完全密閉し、5~40℃の範囲としてください。
  • 寒冷地においてリパッシブ工法の水溶液注入工に用いる時には、成分が析出する可能性があるので、Lタイプ1缶あたり2.8kgの精製水で希釈し、35%水溶液として使用してください。
応急措置
  • 目に入った場合は、速やかに清浄な水で少なくとも15分以上洗眼し、専門医の診察を受けてください。
  • 皮膚に付着した場合は、速やかに石けん水でよく洗い落としてしてください。痛みや外観に変化がある場合は、専門医の診察を受けてください。
  • 衣服に付着した場合は、着替えを行ってください。
  • 誤って飲み込んだ場合は、可能であれば吐き出させ、速やかに専門医の診察を受けてください。その際には、当該材料に亜硝酸化合物が含まれていることを伝えてください。

セメント系小間隙充てん用補修材(ギャップガードPC)

ギャップガードPCは、品質確保が容易なプレミックスタイプのセメント系小間隙充てん用補修材です。PCグラウト用としてご使用頂けるほか、亜硝酸リチウム水溶液「パッシブガードLN」を添加した亜硝酸リチウム補修材として、PCグラウト充てん不足部補修「リパッシブ工法」(NETIS登録No.KT-120108-VR 特許第5312526号)にも適用できます。

特長

優れた小間隙充てん性
流動性に優れ、1mm程度の小間隙まで充てんできます。
長い可使時間
可使時間が長く、練り混ぜ後5~6時間程度使用できます。
静水中の不分離性
適度な粘性を有し、静水中の不分離性に優れます。
パッシブガードLNを添加可能
40%亜硝酸リチウム水溶液(パッシブガードLN)を添加しても所定の性能を確保できます。
PCグラウトとして使用可能
PCグラウトとして使用でき、特に後注入材に適しています。
プレミックスタイプ
プレミックスタイプであり、容易に安定した品質を得られます。
高強度
高強度コンクリートと同等以上の圧縮強度が得られます。

使用方法

配合
  • 当該材料1缶(袋)20kgにつき、水5.75~6.75リットルです。
  • 40%亜硝酸リチウム水溶液「パッシブガードLN」を添加する場合には、当該材料1缶(袋)20kgにつき、パッシブガードLN(Sタイプ)1袋、水7.25~7.75リットルです。
    • 冬場は、流動性の低下が早くなる場合がありますので、温水等を用いて、練上がり温度が15℃以上となるように温度管理を行ってください。
練混ぜ方法
  • 水を所定量入れた容器の中で回転数1000rpm以上のハンドミキサーを回転させながら徐々に当該材料投入してください。
  • 40%亜硝酸リチウム水溶液「パッシブガードLN」を添加する場合には、予めパッシブガードLN(Sタイプ)を水に混入した後、当該材料を投入してください。
  • 標準練混ぜ時間は3分です。

物性

試験項目 試験方法 試験結果
ギャップガードPC単体
W/B=31.3%
パッシブガードLN添加時
W/B=42.0%
レオロジー試験 円筒容器 修正JASS法 293mm 289mm
材料分離抵抗性試験 傾斜管試験 JHS419 ブリーディング水の移動現象やブリーディング跡が認められない ブリーディング水の移動現象やブリーディング跡が認められない
ブリーディング率試験 鉛直管試験 JHS420 0.00% 0.00%
体積変化率試験 -0.27% -0.22%
圧縮強度試験 JSCE-G 531 96.5N/mm2 76.7N/mm2
塩化物イオン含有量試験 全ての材料の品質成績書により算出 0.169kg/m3 0.153kg/m3
上記の物性値は恒温室で試験した測定例であり、性能を保証するものではありません。また改良のため予告なく変更する場合があります。

留意事項

使用上の注意
  • 当該材料は、水や汗・涙等の水分と接触すると、強いアルカリ性になり、皮膚・目・呼吸器等を刺激したり、粘膜に炎症を起こすことがあります。
  • 目に入れないように注意して作業してください。万が一目に入った場合には、直ちによく洗浄し、専門医の診察を受けてください。
  • 皮膚に付けないように注意して作業してください。
  • 鼻や口に入れないように注意して作業してください。
  • 当該材料の取り扱いの際は、保護メガネ、保護マスク、保護手袋を着用してください。
  • 子供には触れさせないように注意してください。
保管上の注意
  • 材料の保管の際には、湿気等に留意願います。
  • 開封後はビニル袋に入れて保管してください。
より詳細な技術資料はこちらからご覧ください
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